迷路の島のサミー少年
迷路の島はミコノス島をモデルに、貿易の組織作りはヨーロッパのハンザ同盟を参考にしました。平和で幸せな国のつながり。今だからこそ願うテーマです。
迷路に守られた島
むかしむかし、青い青いエーゲ海の真ん中に、ミコノス島🏝️という小さな宝物のような島がありました。この島は、ただの島じゃありません。島全体が天然の巨大な迷路になっているんです!
島のてっぺんには、星の光を集めたように美しい教会があり、そこには先祖代々伝わる島の宝物が隠されていました。この教会の場所を知っているのは、島の住民だけ。なぜなら、島の迷路のどこかに、恐ろしい海賊や泥棒が絶対に見つけられない「秘密の抜け道」があったからです。
海賊が来たときは、見張り番が島の住民に黄色い旗🟨で「緊急事態だ!」と知らせます。合図を見た住民は、迷路の抜け道を駆け抜け、あっという間に宝物と一緒に教会に避難。海賊たちは迷路に迷い込んで、いつも「ちぇっ、何もねえ!」と怒って帰るしかありませんでした。
サミー、海賊を迎え撃つ!

ある晴れた朝、いつものように空が青く輝く中、遠くのヤシの木の上に黄色い旗がバタバタと風になびきました。
「来たぞー! ドクロとクロスボーンの海賊団だ!」
住民たちは大騒ぎ! みんな、大切なものを持って迷路へ一目散です。
そんな中、たった一人、家に残っている少年がいました。名前はサミー👦、10歳。彼の家は、迷路の入り口に一番近い、目印のような家でした。
サミーのお父さんは世界をまたにかける船乗り。お母さんは病気で寝ています。 「お母さんは、僕が守る!」
サミーはそう心に決め、家を砦にしました。
海賊たちは船から降りると、「ガハハ!今日は大漁だぜ!」と叫びながら、サミーの家がある方へ突進してきます。彼らは、そこが伝説の巨大迷路の入り口だなんて、露ほども知りません。
しかし、海賊団の隊長ボスのドクロ髭は、経験豊富で勘が鋭い男です。 「おい、なんかおかしいぞ。さっきから同じ岩の横を通っている気がする!」
案の定、突進した海賊たちは、どんどん隊列がバラバラになり、散り散りになって、なぜか最初の場所、サミーの家の前に戻ってきてしまいました。 「くそーっ!なんだ、この変な島は!」ドクロ髭が怒鳴ります。
海賊たちは、水を求めてサミーの家にズカズカと入ってきました。 家の中には、病気のお母さんと、それを守るサミーだけ。お父さんが貿易で得た宝物は、全て教会に隠されていたからです。
ドクロ髭(ひげ)は、サミーを見てニヤリと笑いました。 「ふん、戦利品が少年一人か。つまらん。だが、ちょうど船にはコック見習いが足りなかった。おまえを連れていく!」
サミーは抵抗しました。しかし、鍛え上げられた海賊たちに、病気のお母さんを残して、船に連れ去られてしまいました。
船底で出会った謎の少年
ドクロ髭の海賊船の真っ暗な船底で、サミーは目を覚ましました。手足は太いロープでがんじがらめです。
「うう……腹減った!」 恐怖よりも、空腹が先にやってきました。サミーは「腹が減った!助けてくれ!」と何度も叫びました。
すると、船底のドアがギギギと開いて、焼きたてパンの、たまらない良い匂いが!
「しーっ!これを食べる?」 声の主は、サミーより少し背の低い、つなぎ服を着た男の子でした。
「ロープが解けないと、食べられないよ!」サミーが大きな声で言うと、男の子は真剣な顔で「ごめんね」と謝り、手早くロープを解いてくれました。
「逃げないでね。船長に見つかると怒られちゃうから」 サミーは、外が海だと知っていたので、逃げようなんて思いません。
サミーは夢中でパンと、熱々のスープを飲み干しました。

「きみは誰?」 「僕はボーイ。この船のコック見習いだよ。みんな、僕のことを『船の守り神』って呼ぶんだ」
ボーイは、なぜ自分がこの船にいるのか、昔のことは全く覚えていないと言います。ただ、気づいたら船の中にいて、海賊たちにパンを焼くのが仕事だそうです。
「僕、パンを焼くのが世界で一番好きなんだ! 船の中のことなら何でもわかるんだけど、一番幸せなのは、調理室のパンの匂いの中にいる時なんだ」
海賊船でのスパイ大作戦と友情
サミーは思いました。
「なんておいしいパンを焼くんだろう!この船の守り神なら、きっと悪い子じゃない!」
次の日から、サミーはボーイと一緒に海賊船の雑用係になりました。
サミーは、船乗りの父から船の動かし方や、星を使った航海の仕方を教わっていたので、すぐに船の仕事に慣れました。嵐の夜には、水浸しの操縦室で船長を助け、海賊たちから「すごいぞ、サミー!」と感謝されるほどです。
夜になると、字が読めない海賊たちに、サミーは文字の読み書きを教えました。海賊たちは、故郷の家族に手紙が書けるようになって、大喜びです。
サミーは心の中で考えました。「父さんの言ってた通りだ。海賊だって、本当は誰かを思ったり、何かを学びたい、優しい気持ちを持ってるんだ」
サミーの大きな夢
サミーには、大きな夢がありました。それは、父が目指していた「誰もが幸せになる、正しい貿易の仕組み」を作ること。そのためには、目の前の海賊たちを、人を襲う泥棒から、正しい船乗りに変えなくてはなりません!
サミーはボーイに打ち明けました。 「ボーイ、僕がこの船に来たのは偶然じゃない。海賊たちをみんな、立派な貿易船の船員にするんだ! そのためには、船長の宝の地図が必要なんだ!」
ボーイは目をキラキラさせました。 「すごい!まるで大冒険だね! 僕、パンの匂いで船長の宝箱の場所がわかるよ!」
二人は協力して、船長の部屋への潜入計画を立てました。
決戦!幻の港での大決意
ある夜、嵐で船が大きく揺れる中、サミーとボーイは実行しました。
ボーイが焼いた、世界一美味しいチョコレートパンを食べて、海賊たちがぐっすり寝静まったのを見計らい、サミーは忍び込みました。
ボーイは鼻をクンクンさせます。 「あっち!この強い鉄の匂いと、古い紙の匂い。船長の大事な宝箱は、ベッドの下の隠し扉だよ!」
サミーは、隠し扉を開けて、分厚い地図を見つけ出しました。そこには、宝の隠し場所ではなく、海賊たちがこれから襲おうとしている貿易船の航路が描かれていました!
「大変だ、ボーイ!次の港で、たくさんの船が海賊に襲われる!早く止めないと!」
その時、隠れていたドクロ髭が現れました! 「ガキども!何をしている!」
サミーは、地図を胸に抱き、叫びました。 「ドクロ髭船長!あなたたちは、もう終わりです!僕は、あなたたちの船を、今日から正しい貿易船に変えます!人を襲うのはもうやめて、みんなが豊かになる手伝いをしましょう!」
ドクロ髭はサミーの目を見て、その真っ直ぐな瞳に圧倒されました。
「お前は、俺たちが失った夢と希望を持った目だ…」
ドクロ髭は、自分がかつて、正しい船乗りを夢見ていたことを思い出しました。しかし、嵐で船を失い、生活のために海賊になったのです。
「わかった…。サミー。この地図にある『希望の幻の港』に着いたら、俺はおまえに船を譲る。だが、もしお前が失敗したら、おまえの島に戻って、全てを奪い尽くすぞ!」
夢を乗せた貿易船サミー号
船は「希望の幻の港」に到着しました。ドクロ髭は約束通り、サミーに船を譲り、故郷へ帰って行きました。

サミーは海賊たちを集めて、船の上で大きな声で宣言しました。 「今日から、この船は海賊船ではありません! みんなの欲しいものを運ぶ、貿易船『サミー号』です! 嫌な人は、好きな港で降りていい!でも、僕と一緒に、世界中の人を笑顔にする旅に出るなら、残ってくれ!」
海賊たちは、読み書きを教えてくれたサミーを信じました。そして、何より、ボーイの焼く世界一のパンの匂いが、彼らを正しい道に引き戻したのです。
一番悩んだのはボーイ。 「僕、船の外に出たことがないから、不安だよ…」
サミーは言いました。「心配するな、ボーイ。きみのパンが、僕たちの船の最強の宝物だ!きみのパンの匂いは、世界中の港を平和にするよ!」
サミーは船長となり、世界中を航海しました。サミーの正しい貿易は世界中の人々の信頼を集め、巨大な貿易組織を築き上げました。
そして、ボーイは、ついに船を降り、サミーが頼んでおいたドイツの港で、パン作りの世界一のマイスターに弟子入りしました。彼は、もう「ボーイ」ではありません。世界中から尊敬される「トム親方」と呼ばれるようになりました。
トム親方の焼いた、幸せになるパンを、サミーが船で世界中に届ける。
こうして、迷路の島から連れ去られた少年と、船底でパンを焼き続けた少年は、友情と勇気で、世界中に笑顔を届ける大貿易家と大パン職人になったとさ!
おしまい
山田みち子が長年書き留めた絵本を2025年9月から画像サービスを開始したGeminiと共創しました。
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