灯台の使命と歴史と重み
1: 犬吠埼灯台:千葉県最東端
殺伐とした風景こそが、光の舞台

周囲には何もない。ただ、青い海と、白い波、そして空。
私がレンズを向ける「灯台」は、多くの場合、人里離れた厳しい海岸線に立っていました。特に千葉県最東端の犬吠埼灯台(いぬぼうさきとうだい)が立つこの場所は、太平洋に突き出し、海上交通の難所を照らし続けてきた光の舞台です。
灯台の周りが殺伐としているのは、彼らが文明の利便性のためではなく、「自然の猛威」と「航海の安全」の境界線に立っている証拠なのです。

歴史:明治の夜明けを照らした光
犬吠埼灯台の存在価値は、その歴史的な重みにあります。
この灯台が点灯したのは、明治7年(1874年)。近代国家の建設を進めていた日本にとって、海上の安全確保は急務でした。犬吠埼灯台は、イギリス人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計により築かれました。彼は日本の近代灯台建設に大きく貢献した「日本の灯台の父」とも呼ばれる人物です。
- 日本で2番目に古い洋式灯台:
レンガ造りの美しい姿は、明治初期の最先端の技術と、海を守ろうとする人々の意志の結晶です。 - 素材のこだわり:
99段ある螺旋階段を登ると見えてくる、分厚い壁と堅牢な構造。これは、ただの建物ではなく、何百年も変わることのない「未来への約束」を具現化した建造物なのです。
使命:灯台の存在価値は正確さにある
灯台の使命は、ただ明るく照らすことではありません。それは、正確な位置情報と信頼を発信し続けることです。
- 光の個性:
各灯台は、光り方(周期や光の数)が全て異なり、船乗りは夜闇の中でその光のパターンを読み取り、自船の位置を確認します。犬吠埼灯台は現在も「毎20秒に1せん光」を放ち、船乗りたちに正確なメッセージを送り続けています。 - 変わらない安心:
どんな嵐の日も、どんな霧の日も、決まったリズムで光を放ち続けること。周囲の殺伐とした景色の中で、この規則正しく、揺るぎない光のリズムこそが、船乗りにとっての命綱であり、灯台の究極の存在価値なのです。
2: 野島埼灯台:房総半島最南端
房総の盾、野島埼灯台:挫折と再起の物語

使命:最南端という責務
房総半島の先端、野島埼灯台(のじまさきとうだい)が立つ場所は、まさに「最南端」です。
東京湾に出入りする船、太平洋を航行する大型船にとって、この野島崎を回り込む航路は非常に重要です。この灯台の光が届くか届かないかで、船の安全は大きく左右されます。
その「最南端」という地理的な使命感と緊張感こそが、この孤高の灯台が持つ存在価値の根幹。(椰子の木がその象徴)

歴史:震災を乗り越えた再建の物語
野島埼灯台もまた、明治2年(1869年)に、犬吠埼灯台と同じくブラントン設計により点灯した歴史ある灯台でした。しかし、その輝かしい歴史は、大正12年(1923年)の関東大震災によって一度途絶えてしまいます。
- 失われた光:
地震により、初代の灯台は崩壊。海上の安全を担う光が一夜にして失われ、当時の航路にとって大きな危機でした。 - 再起の象徴:
その後、すぐさま再建され、現在の白く美しい灯台は、「失われた光を、二度と絶やさない」という強い決意と、復興への願いを込めて再点灯されました。
殺伐とした美しさの正体
野島埼の周囲には、派手な観光施設はありません。あるのは、荒々しい岩場と、その岩場を洗う白波だけ。
この殺伐とした風景は、灯台が担ってきた「自然との闘い」の歴史を雄弁に物語っています。灯台は、その場で何世代にもわたって、変わりゆく海と空を観察し、記録し、その知識と光をもって船を守り続けてきました。
周辺の余計なものがそぎ落とされた環境だからこそ、灯台の白い姿と力強い光が、より、純粋な使命の象徴として際立つのです。
3: 洲崎灯台:東京湾への水先案内
全房総半島の入口と出口を守る「門番」として機能

使命:航路の「門番」
洲崎灯台(すのさきとうだい)が立つのは、房総半島の西端、館山湾の入口に突き出た岬。この灯台の最も重要な使命は、東京湾に出入りする全ての船に対する「門番」として機能することです。
大型のコンテナ船、タンカー、フェリーなど、日本経済の動脈ともいえる多くの船が、この岬を通過します。灯台の光は、船に正確な位置情報を提供し、複雑で交通量の多い東京湾口での衝突事故を防ぐための、最初の重要な標識です。

歴史と価値:現代の海運を支える光
この灯台は、関東大震災後に再建され、現在の姿になりました。周囲に何もない殺風景な環境は、船乗りにとって灯台の光だけが頼りであることを強調します。その白い姿は、「大都会のすぐそばにありながら、人の営みから切り離された使命」を静かに示しています。
4. 勝浦灯台:リアス式海岸の安全
九十九里浜の始点と終点を守る光

使命:複雑な地形を照らし安全を確保。
勝浦灯台(かつうらとうだい)は、房総半島の中央東岸、複雑な海岸線を持つリアス式海岸の岬に立っています。この地形は、荒天時には波が激しく、船にとって危険な場所が多いです。
勝浦灯台の使命は、港へ出入りする漁船や、入り組んだ地形を避けながら航行する小型船に対して、浅瀬や岩礁の位置を明確に知らせることです。その光は、遠洋航海よりも、むしろ地元の漁業の安全という、生活に直結した重要な役割を担っています。

歴史と価値:地域の生活と共にある光
この灯台は、地域の漁業を支えるために、古くからその役割を果たしてきました。その存在価値は、地域の港町のシンボルとして、人々の暮らしに寄り添ってきた歴史にあります。灯台が放つ光のリズムは、単なる航路標識ではなく、地元の人々にとっては「今日も一日、漁から無事に帰ってこられた」という安堵のサインなのです。

5. 太東崎灯台:長い砂浜の目印
房総半島の入口を守る光

使命:九十九里浜の「始まり」を示す
太東崎灯台(たいとうざきとうだい)は、日本有数の長さを誇る九十九里浜の南端に位置しています。
九十九里浜のような単調で変化に乏しい砂浜の海岸線は、船乗りにとって、陸の目印(ランドマーク)を見つけにくいため、かえって危険です。太東崎灯台の光は、長い砂浜の始まりを示す、唯一無二の目印としての使命を担っています。

歴史と価値:地形と一体化した標識
現在の灯台は比較的新しいものですが、その場所に灯台が立つことの価値は変わりません。地形そのものが持つ目印としての役割を、夜間に光で引き継ぐのが太東崎灯台の存在意義。周囲に人工物がない殺伐とした岬の景観は、灯台が担う「自然の中で迷子になることを防ぐ」という、原始的な使命を強調しています。
6. 飯岡灯台:九十九里浜の「終点」

使命:屏風ヶ浦の「安全」を知らせる
飯岡灯台(いいおかとうだい)は、九十九里浜の北端、断崖絶壁屏風ヶ浦(びょうぶがうら)の始まりに立っています。
九十九里浜を北上してきた船にとって、この灯台の光は「間もなく断崖にさしかかり、航路を変える必要がある」という重要な警告信号の役割を果たします。その使命は、船を誘導すること以上に、危険な地形への接近を防ぐという、防御的な意味合いが強いのが特徴です。
歴史と価値:光のバリアとしての存在
飯岡灯台が立つ高台からの景色は、屏風ヶ浦の荒々しい姿を一望できます。灯台の白い光は、この危険な地形に対する「光のバリア」として機能し、船乗りたちに常に警戒を促します。周辺の風景がもたらす緊張感こそが、この灯台の存在価値を際立たせる舞台装置なのです。

同じような姿、殺伐とした風景。朝夕の瞬間の美しさは別格として、地味な存在、孤高の光としての灯台を写真で撮り続けたのは、そこにこそ価値があるからと信じた行動からです。
灯台の存在価値は、今こそ皆様に知って頂きたいと願っています。写真は知られざる価値を表に出す作業かもしれませんね。
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